楠戸家は、「はしまや」の屋号を持ち、明治2年の創業以来、今日も呉服店として営業が続けられています。主屋をはじめ米蔵・炭蔵・道具蔵・塀が平8(1996)年に登録文化財になっていますが、主屋のうち店舗部・玄関部・中座敷部は、平成14(2002)年2月20日に倉敷市指定重要文化財になりました。 現在の店構えは明治中期に整えられたとされています。主屋の平面は町屋の完成形のひとつである「表屋造」で、明治期の町屋らしい合理性の高いものになっています。主屋2階のしっくいを塗り込めた「虫籠むしこ窓まど」は、当時の近畿地方の町屋の手法が取り入れられており、楠戸家住宅の大きな特徴になっています。また、海鼠壁の蔵や屋根付きの板塀なども含め、明治時代の町屋の屋敷構えとして高い水準を示しています。 古こ禄ろくの町屋「井上家住宅」、新しん禄ろくの町屋「大橋家住宅」や「旧大原家住宅」の時代のあとを受けて、楠戸家住宅は明治時代中期を代表する町屋として、倉敷の町屋の歴史を現代に伝えています。