備中松山城の建造物としては、天守、二に重じゅう櫓やぐらと三さんの平ひら櫓やぐら東ひがし土ど塀べいが現存しており、重要文化財に指定されています。天てん和な元（1681）年に藩主水谷みずのや勝かつ宗むねが修築に着手し、同3（1683）年に完成しました。建物は塗ぬり込こめ土ど蔵ぞう造づくりのいわゆる近世式城郭建築に改められましたが、城地は元弘元年（1331）に備中守護職高橋九郎左衛門が初めて築城した小松山城の縄張をほとんどそのまま用いています。
　古文書によると、天守は三重櫓と呼ばれており、外観は三重ですが、実際には二階建です。一階には囲い炉ろ裏りがあり、装しょう束ぞくの間まという城主だけが入る一段高い部屋があります。二階の正面には御ご社しゃ檀だんを設けて三振の宝剣（県指定重要文化財）を御神体として祀っていました。本来の構造は八の平櫓から廊下を通って入る連結式でしたが、昭和15（1940）年の大修理の際に、荒廃がひどく原型の復帰が困難なため、やむなく切離したもので、昔の姿とはやや異なっています。
　二重櫓は、天守の北側に配置されており、天守とともに本丸を構成する重要な建築物です。昭和3（1928）年に有志の拠金によって修理、昭和34（1959）年の国による解体修理で完全に復原しました。
　三の平櫓東土塀は、土を練って造った土の塊を積み重ね、白壁仕上げにしたものです。
　なお、備中松山城は、天守の現存する山城としては全国で唯一のものです。